皆さんは神経管閉鎖障害という病名を聞いたことがあるでしょうか。
母体の栄養が不足することによって発症するといわれており、赤ちゃんの先天性疾患の最も有名な病気の一つとされています。
私の親戚にも一人いて、飽食と言われている現代日本において、栄養について気をつけている妊婦でも知らず知らずのうちに栄養不足となって発症してしまいます。
この神経管閉鎖障害はまず長期間の治療が必要で、治療が終わった後もリハビリが必要となり、日常生活が車椅子が不可欠になってしまう恐ろしい病気です。
一方であることに気をつければほとんどの妊婦と胎児が防げる症状でもあるのです。
今回はこの神経管閉鎖障害の症状、原因、治療、検査方法について解説するとともに、どのように回避すべきかについても説明していきます。
神経管閉鎖障害とは?
赤ちゃんを産むときに最も気になるのが無事に元気に生まれてきてくれるかどうかです。
今回説明する神経管閉鎖障害とは胎児が母体内で、脊髄や脳の組織を作る大元になる「神経管」と呼ばれる筒上の細胞がふさがってしまうことで、脳や脊髄が正常に成長できなくなってしまう疾患です。
これによって歩行障害などの運動機能の低下、脳機能障害につながってしまいます。
胎児期において神経管のどの部分が塞がるかによって障害の現れ方が異なり、大きく無脳症や二分脊椎症という二つの分類に分かれます。
二分脊椎症
神経管の中でも下の方がふさがってしまうことによって発症します。
症状の部位や重症度などはふさがってしまう場所にも依存するのですが、本来、神経管から作られる脊柱や脊髄が正常に成長せずに一部が分断されてしまい、脳からの指令が四肢などの体の各部位に伝達されなくなるので、場合によっては下半身不随などになってしまいます。
不随とならなくても、下半身の神経が麻痺しているので運動障害、特に歩行障害が見られたり、転んでぶつけたり、叩いたりしても痛みなどの感覚はありません。
通常は膀胱や直腸なども筋肉によって動かされていますが、二分脊椎症では筋肉自体が麻痺しているので、排尿、排便障害、性機能障害が起きることもあります。
この障害の恐ろしいところは、生まれてくるまでにどんな障害が現れるのかはっきりとはわからないということなのです。
日本国内での二分脊椎症の発症率は0.05%、すなわち1万人に五人程度と言われています。
無脳症
二分脊椎症とは異なり、神経管の上の方がふさがってしまうことで発症します。
神経管の上部は脳を生成する部分なので神経管上部のふさがりは直接、脳の発達や機能に影響します。
脳以外の臓器への障害は見られず、障害が脳の機能だけであればまだ生存確率は高いのですが、脳が形成されずに欠損状態となれば生きていくことすらできませんので、流産や死産につながるケースがあります。
神経管閉鎖障害の原因とは?
二分脊椎症や無脳症にしても、起こりうる確率がとても低いからといって安心することはできません。
そもそも神経管閉鎖障害は遺伝、妊娠期間中の生活環境に加えて、ある栄養素の摂取不足が大多数の原因であるため、こうした栄養素と摂取を促す栄養バランスにもきちんと気を配って摂取している大部分の妊婦は障害につながっていないというだけで、逆に気をつけていないと無縁とは言えないのです。
その栄養素が妊婦には不可欠と言われている「葉酸」なのです。
妊娠初期に葉酸不足がもたらす影響
妊娠初期は子宮の中で、神経管を元に胎児の脳や神経、心臓といった様々な器官が作られる時期となっております。
卵子という一つの細胞から受精卵となって子宮内で着床する頃には数十の細胞を持っていますが、妊娠初期にはこの細胞分裂が驚くようなスピードで進み、この時に必要なDNAの合成を促す重要な役割を持っているのが葉酸です。
こうした胎児の成長に重要な役割を持っている葉酸の摂取量が妊娠初期に不足するか、葉酸の効果を発揮するために必要なビタミンB12が不足していると、細胞の増殖が滞って神経管閉鎖障害の発症リスクが高まってしまうのです。
またそのほか、アルコールやタバコなどの摂取や葉酸の吸収・代謝を阻害すると言われているので、妊婦は飲酒や喫煙はおろか、タバコの副流煙から遠ざかるようにしなければなりません。
葉酸はいつから摂取すればいいの?
このように妊娠初期の葉酸不足が神経管閉鎖障害の主な原因となることがわかっているので、日本のみならず世界中で妊婦さんの葉酸摂取が推奨されています。
特に妊娠する前から葉酸を摂取していると神経管閉鎖障害の発症リスクを7割以上も抑えられるといわれており、厚生労働省が妊娠の可能性のある女性に対して、葉酸サプリメントなどを利用して1日に400μg以上摂取することを推奨しています。
ただし、先ほども述べたように神経管閉鎖障害の発症には遺伝的な要因や妊娠期において、他の栄養バランスや適度な運動と安静にしているかどうかという生活環境なども絡んでいる場合もあるので、葉酸さえ摂取していれば100%予防できるわけではなく、生活環境と栄養摂取を規則正しく守る必要があるのです。
神経管閉鎖障害が判明するのはいつ?
仮に様々な対策を取っていても残念ながら神経管閉鎖障害になることはあります。
通常、妊娠してから4ヶ月目に定期検診があり、病院によってはその際の超音波検査で診断されることがあります。
これは二分脊椎症や無脳症を発症すると頭部や四肢などの特徴が見られるようになるためです。
こうした検査で神経管に異常があったと診断された場合、出生後から早速治療が始まります。
具体的には脊柱の変形以上に対する手術や阪神障害に対する矯正手術、成長後は松葉杖や補足具などが貸与されます。
泌尿器系の障害があれば失禁を防止するための手術も行うことも可能です。
妊娠前から神経管閉鎖障害を予防しましょう
妊娠前から栄養バランスを考えた食事で対策をとりましょう。
もし食事面で不安があればサプリメントでの摂取も考えてください。
葉酸は特に葉物野菜を中心に緑色系野菜に多く含まれています。
特に枝豆は茹でても葉酸の損失が少なく、つわりの時にも食べやすいサイズですので妊婦時代には重宝していました。
その他モロヘイヤ、ブロッコリー、芽キャベツ、ほうれん草などが葉酸が含まれる代表的な野菜です。
まだ妊婦ではない方であれば、できれば妊娠を考えた瞬間からこうした野菜をとるようにしておきたいものです。
▼参考記事
妊娠中に最もとりたい栄養!葉酸の2大作用とオススメの摂取方法は?
最新記事 by たまひよ (全て見る)
- モンテッソーリ教育の基本理念と簡単な実践方法 - 2018年8月11日
- 私が絨毛膜下血腫と診断された時の対処法と胎児への影響 - 2017年11月9日
- 何歳から英語を学ぶべき?子育て工学で考える最適な英語学習年齢とは? - 2017年8月31日